【配るだけで終わらせない】ブランド体験×効果検証のできるサンプリングを実現

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キリンビール株式会社

マーケティング本部 マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当・村上亜美 氏

キリンビール株式会社(以下、同社)は、2022年に缶チューハイブランド「氷結」のリニューアルを実施。同社では発売に際し、「完璧なキリンチューハイ」というキャッチフレーズのもと、「氷結」の商品名をあえて伏せたティザー広告をさまざまなメディアで展開しました。その一環として実施されたのが、商品名を伏せた試飲缶“ミステリー缶”、計100万本のサンプリングです。

同社では、コンビニやスーパーなどでのサンプリングに加え、TSUTAYA・蔦屋書店でもレジ通過者へのサンプリングを実施*1。同時に、蔦屋書店では、平台展開を実施。書店でアルコール飲料を配布するという一見、意外性のある組み合わせですが、来店者や”ミステリー缶”を受け取った消費者の反応はポジティブなものが多く、発売後の実購買にも繋がったといいます。
そこで、この施策の狙いと成果につながるポイント、そして本施策の持つ可能性について、今回の取り組みを進めたキリンビール株式会社マーケティング本部マーケティング部RTDカテゴリー戦略担当の村上亜美氏にお話を伺いました。
効果 サンプリングと平台展開を掛け合わせることで、来店者の能動的な顧客体験の場を創造。また、ブランド名を伏せたサンプリングをすることで、発売前の興味喚起に繋がった。結果として、”ミステリー缶”配布者は非配布者と比較し、発売後の実購買率が向上した。
施策 蔦屋書店で、あえて商品名を伏せた、”ミステリー缶”をサンプリング。加えて、書店という空間を活かし、「氷結」の「完璧なキリンチューハイ」というキャッチコピーを体験できる、「完璧を味わう体験フェア」を開催。タイトルや著者が分からないように装丁を隠した”ミステリー本”を陳列した平台展開(蔦屋書店店内・書棚での店頭プロモーション)を実施。
目的 「氷結」のリニューアルに先がけ、消費者の商品への興味を最大化する。先入観のない状態で、リニューアルする「氷結」の美味しさ・世界観を体験してもらう。

蔦屋書店で実現した、コロナ禍での新しい顧客接点

「氷結」は、発売以来20年を超え、その認知率もRTDカテゴリー*2の中でトップという、缶チューハイのロングセラーブランドです。今回、そのリニューアルに際し、100万本という大規模なサンプリングを実施した理由を、村上氏は次のように説明しました。
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「氷結は2001年に発売されて以降、長年にわたって展開しているブランドであり、おかげさまで、今まで非常に多くのお客さまに飲んでいただきました。しかし、それゆえのハードルもあります。実は、今までも、時代の変化に合わせて味を進化させているのですが、過去に飲んだときに持たれた印象の記憶で止まってしまっていることが少なくありません。
そうなると、氷結の味は変わってきているにもかかわらず、そのようなお客さまには、手に取っていただく機会がなくなってしまうのです。新しい味になったことをどのようにお伝えしたらよいのか、それが課題となっていました

「そこで、『過去の「氷結」の先入観を無くし、飲んでいただきたい』と思い、商品名を伏せた“ミステリー缶”を全国のお客さまにお渡しできるよう、過去にない規模感でサンプリングを実施することにしたのです。また、想像を超えるくらいの美味しさを実現できたという自信もあったので『完璧なキリンチューハイ』というキャッチコピーで展開することにしました。(村上氏)
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サンプリングの配布場所に関して、コンビニやスーパーといった小売店やフィットネスクラブなどに加え、なぜTSUTAYA・蔦屋書店でのサンプリングに至ったのでしょうか。

「機械的に”ミステリー缶”をお渡ししても、お酒を飲まない方や、缶チューハイは好きではないという方では、口にされずに捨てられてしまうことがあります。しかしCCCマーケティング(以下、CCCMK)さんのTカードのデータを活用した、精緻なセグメントでアプローチができるサンプリングであれば、適切なお客さまにお渡しできると考えたのです」(村上氏)

そこで、CCCMKにTSUTAYAでのサンプリングの相談をしたところ、TSUTAYAサンプリングに加えて提案されたのが、蔦屋書店の平台を活用した展示企画とサンプリングでした。
書店とアルコール飲料という一見、意外性がある組み合わせですが、CCCMKから提案を受けた村上氏は「良い意味で驚いた」と明かします。
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「商品の話題作りやタッチポイントを増やすという観点から、交通広告や試飲会などのイベントの実施も検討しましたが、コロナ禍で外出が控えめになっている中、より適切なアプローチがあるのではないか、とマーケティングのプランニングに苦労していました。まさにそのとき、蔦屋書店の平台を活用したサンプリング、というご提案をいただいたのです。
コロナ禍でも、店頭で体験した後、自宅で商品を味わうことができる、多角的かつリアルの顧客接点を創りだすことができる企画として、『おお、これはすごい!』と思いました。また、蔦屋書店は、情報感度の高い方が訪れる空間です。そのような場所で、テーマ、ストーリー性、ビジュアルまで専属チームを組んで、「氷結」のための平台を作っていただけるというお話だったので、ぜひお願いしたいと思いました」(村上氏)

来店者が能動的に楽しめる平台展開・サンプリングの仕掛け

新しい「氷結」の世界観を正しく伝えるために、2ヶ月ほどかけて同社とCCCMKで平台のイメージをすり合わせました。その点について、村上氏はこう説明します。

「お客さまに伝えたかったのは、リニューアルした「氷結」が世の中に出るということだけではありません。私たちがキービジュアルで表現している“気持ち良い真っ青な空のもと、このチューハイを飲むことですっきり爽快にリフレッシュできるという情緒”も、感じていただきたいと思いました。それを蔦屋書店の中でどのようにお客さまに伝えるか。蔦屋書店に訪れる方の知的好奇心をくすぐるテーマ性と、キービジュアルが持つさわやかな世界観をどのように両立させるのか、何度もCCCMKさんと話し合いを重ねました
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そのようなプロセスを経て組み上げられたのが「完璧を味わう体験フェア」の平台です。平台の中では、リニューアルする「氷結」のキャッチコピーである「完璧なキリンチューハイ」を模し、「完璧な哲学を味わう」、「完璧な妄想を味わう」など、「完璧な○○を味わう」というテーマのもと、蔦屋書店のコンシェルジュが選んだ書籍を展開。
書籍は、来店者の好奇心をくすぐることを狙い、タイトルや著者を伏せた装丁で、引き棚などを活用し、お客さま自ら手を伸ばしたくなるような展開を実施しました。

この平台展開について、村上氏は次のように述べました。
「キックオフミーティングのときに想像していたものよりもはるかに見ごたえがあり、お客さまも楽しめそうなものに昇華されていると感じました。自分たちで同じことをやっていたら、もっとブランドが伝えたいことをメインとした、一方的な訴求となってしまっていたと思います」

実際、興味深く平台をのぞきこんだり、「これ、なんだろう」と、”ミステリー缶”を手に取っている来店者も多く、反応は上々。用意していた”ミステリー缶”は順調に配布できました。また、SNSには、ミステリー缶を飲んだ感想として「ブランド名を知りたい」「発売したら購入したい!」などポジティブな意見が多く見られ、話題となっていました。

効果検証ができるサンプリングにより実購買への影響が明らかに

TSUTAYA・蔦屋書店でのサンプリングは、Tカードのデータを基に事前にセグメントした、アプローチ対象となる条件のお客さまがレジを通過した際に抽選でレシート型の引換券を発券し、その場で”ミステリー缶”を配布。
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リニューアルした「氷結」の発売後、”ミステリー缶”配布者のTカードの購買履歴を基に、「氷結」の購入動向を効果検証したところ、”ミステリー缶”配布者は非配布者よりもサンプリング対象フレーバーの「氷結」の購入率が高い結果となった。さらに、サンプリング対象以外のフレーバーも含む、「氷結」ブランド全体の購入率も高くなったことが分かった。

村上氏は、TSUTAYA・蔦屋書店でのサンプリングについて、次のように評価しました。
「”ミステリー缶”をお渡ししたことが、その後の購入につながったかどうかは、一般的な『渡して終わり』というサンプリングではわかりません。しかし、TSUTAYA・蔦屋書店でのサンプリングなら、Tカードのデータを基にお客さまの行動を捉えることができるので、投資効果を測ることができます。これはCCCMKさんでなければできないことだと思います」

蔦屋書店の空間には無限の可能性がある

村上氏は、今回の蔦屋書店での企画について、以下のように総括しました。

「サンプリングをしても、単にお客さまが商品を受取っただけで終わるのか、あるいは、それが新しいブランド体験になって次の行動につながるのか、大きな違いがあります。今回の蔦屋書店での施策は、お客さまが自分で興味を持って能動的に展示に触れ、それに紐づく形で商品を受け取るという、新しいブランド体験を提供できました。その結果、よりポジティブに、この商品と向き合っていただけたのではないかと感じています」

今回の施策で、商品だけでなく、その世界観の訴求という、サンプリングの新しい価値を実現できたと感じている村上氏は、最後に、次のように感想を話しました。
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「お客さまに主体となって楽しんでいただく仕掛けをどのように作るのか、ということを今回の取り組みで学ぶことができました。蔦屋書店の空間を使ったお客さまとのコミュニケーションには無限の可能性があると思います。あの空間で何かを体験したいという情報感度の高いお客さまとブランドをマッチングさせることで、新しい顧客体験を提供していく。それは、これからのマーケティングにおいて、とてもいい方法だと感じました。今回はサンプリングを中心としたお取組みでしたが、これからもCCCMKさんとさまざまな新しい取り組みを進めたいですね」

*1 “ミステリー缶”のサンプリングは20歳以上と確認できるお客さまのみ対象としております。
*2「RTDカテゴリー」Ready To Drinkの略称。缶チューハイや缶ビールのように、蓋を開ければそのまま飲める飲料のカテゴリー。
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